おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『仁義なき戦い (1973)』【90/100点: 仁義ある新人ヤクザ】

泥臭いヤクザたちの裏切りに次ぐ裏切りを描いた、「日本のヤクザ映画はすべてここから始まった」と言っても過言ではないパイオニア的な存在でありますが、やはりお話が異常に面白いです。

ヤクザ映画的な薄汚いキャラクターたちの魅力は勿論のこと、上司の勝手な都合で振り回される部下、という社会人経験があれば何かしら見覚え聞き覚えがあるだろう内容なんですね。映画自体のやんちゃなパブリックイメージとは裏腹に、登場人物各々の心象風景描写も丁寧で、人間ドラマとしても楽しめる杞憂な傑作だと思います。

【ネタバレ若干あり】

お話

舞台は太平洋戦争直後の広島で、戦地から復員したばかりの広能昌三(菅原文太)が主人公。若さと血の気が溢れる広能は、広島ヤクザ山守組が手を焼いていた暴漢を「俺がやったろうか?」と山守組の会話の輪に入り、“静粛”を請け負います。暴漢を射殺した広能は刑務所に収監することになるのですが、同じ房には広島ヤクザ土居組の若頭・若杉(梅宮辰夫)がいました。若杉の漢気に惚れた広能は、盃ではなく腕の血を舐め合うことで若杉と兄弟分になり、若杉の脱獄をお手伝いします。

山守組と土居組が友好関係だったこともあり、加えて脱獄の恩があった若杉の計らいで、広能は保釈と同時に山守組に入ることになり、広能は正式にヤクザとして活動することになります。が、少し経って呉市議選を巡り山守組と土居組は敵対関係になってしまいます。鉄砲玉として土居組長を射殺した広能のおかげで、山守組はかつてないほど広島での勢力を拡大するのですが、今度は山守組内部で坂井と新開の幹部一派の内紛が始まってしまう、ってな内容です。*1

可哀想な新人と狸ジジイ

終始色んな人の思惑に振り回される広能が可哀想な内容にはなってますが、ロクな人がいないヤクザの滑稽さが上手いことまとまっています。

金子信雄演じる山守組長の狸ジジイっぷりは中でも秀逸で、裏でコソコソ色んなことに手をつけつつ「ワシの為にやってくれんか!」と何度も広能に泣きつく面の皮の厚さには笑ってしまいました。

もはやシリーズの影の主役と言っていいくらいの金子信雄演じるクズ組長っぷりは必見

超カッコイイ先輩、若杉

そんな中で菅原文太演じる広能と梅宮辰夫演じる若杉の漢気一本ぶりも輝いており、若杉の漢気を広能はしっかりと受け継ぎます。

話の展開として若杉が中盤くらいで警察に射殺されてしまうのですが、実はこの射殺の原因が山守組の誰かからの密告だったことが発覚し、広能は「アレ…?今更だけど山守ってヤバくない…?若杉兄貴が生きてたらこんなことには…」と一気に山守組に対してシラケムードになってしまいます。

この広能と若杉の兄弟盃の結末がラストの名台詞「弾はまだ残っとるがよ」に繋がるワケで

よく考えたら広能も良くない

よくよく考えれば、広能は漢気一本とはいえ基本パワー系のトラブル解決をしていたこともあり、広能自身がもっと頭使って器用に立ち回れば良いのに、って部分もいくつかあるんですが、ヤクザ的新入社員である広能は上司に散々振り回されても「まあ仕方ないか…」という脅威のメンタリズムで我慢しまくるんですね。コレは確かに人気が出る主人公ですし、共感出来る性格描写ですね。

ということで、お仕事映画のような側面もあり、何度観ても面白い映画です。大傑作『県警対組織暴力』が大好きなワタクシですが、本作もとても面白い映画です。邦画が元気だった頃を象徴するような傑作だと思います。

*1:こう書いてみると割と複雑な話ですね。